極私的視点(再)

思いついた時に、思いつきの文章とそれっぽい写真を大公開です。

国芳から芳年へ

国芳とかいっても知らん人も多いだろう

何年か前、同じ美術館で開催された浮世絵展(そっちのメインは北斎だった気がする)で展示されてて、ひと目見てそのかっこよさに惹かれたのが歌川国芳。特に国芳の浮世絵は、コントラストがはっきりしたアメコミみたいな絵柄で、かつ歌舞伎や講談を題材にしたものだと登場人物が皆決めポーズをとっていたり主題を極端に誇張して大きく描いたりと、かなり現代的な印象で、他の人が描く浮世絵とは違いとてもおもしろいと思いました。

そんな国芳の絵がまた見られるとなると行かざるを得ない。で、行ってみましたよ。

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https://www.hpam.jp/upload/editor/files/国芳芳年展A4チラシ.pdf:image=https://www.hpam.jp/upload/editor/files/国芳芳年展A4チラシ.pdf

 ちなみに、今回の展示は全作品撮影オーケーです。(念の為、係の人にも確認したら、フラッシュを焚いたりなど、他の方の迷惑にならないならば問題なし、との説明を受けました)

前とは違う構成で、例のハデハデな作品は少なかったものの、前回展示がなかった水木しげる御大が「がしゃどくろ」のネタ元にしたといわれる「相馬の古内裏」が見られたのはお得でしたね。

ja.wikipedia.org

なお、7月からの特別展は水木しげる作品らしい。こいつも見にゆかねばならんね。

国芳は実際の人骨をスケッチした上で描いてたらしい。

入館するとちょうど学芸員の人による館内ツアーの開始時間だったけど、一緒に回ると自分が見たい絵をじっくり見る時間もなかろうと、解説の声が聞こえる程度で付かず離れずの位置関係で見ておりました。

弟子の月岡芳年が描く血みどろの絵もたくさん飾ってあった。ひとを殺めた時の緊張感が感じられ、単純な線画である浮世絵からかなりの迫力を感じましたね。

水野十郎左衛門一派に風呂場で襲われて絶命する幡随院長兵衛の図。足に折れた槍が刺さったまま水を飲むイキがり方が、町奴の親玉としての心意気を感じる。全身血まみれで、その中に血の手形があるのがリアル。写真はちょっとブレてるな。反省。

月岡芳年でよく知られているのが「奥州安達ケ原のひとつ家の図」。恐ろしい鬼婆の話が、一転親子の悲劇の物語となる。

歌舞伎や能でも演じられるそれらの場面を月岡芳年が描いたものだが、あまりにリアルであったためか、この絵は風紀を乱すという理由で政府によって発禁処分となったらしい。

 物語の詳しくは以下リンクで。

ja.wikipedia.org

仮名手本忠臣蔵などの歌舞伎を題材にしたものや、美人画などたくさんの作品が展示されていたけれど、その中でも幕府を批判したものがいくつかあった。細かい仕掛けはやはり解説を聞かなければわからない。そういった基礎知識があれば、ただ漠然と眺めるよりも何倍も楽しめるだろう。人間いくつになっても勉強ですな。

「浮世よし尽久志」に描かれた歌川国芳本人(と言われるひと)。ドテラに描かれた紋と肩にネコを乗せているので間違いなし。それでよし。

展示されていた国芳の作品の多くが、三枚一組になっていた。その特性を生かした構図は、現在の漫画やアニメ、東映の時代劇や戦隊ヒーローものにも通じるかっこよさがあった。江戸後期のひとだけあって、その弟子たちが描いた作品にはヨーロッパの宗教画を思わせるようなものもあり、逆にヨーロッパの印象派では浮世絵に影響受けた作品があることなどから、情報通信が未発達だった時代でも遠く離れた土地の間でお互いに影響しあってたんだなぁ、などと思いつつ見て回りましたよ。

それから広島県立美術館には、サルバドール・ダリの「ヴィーナスの夢」が常設展示されているので必ず見て帰ったほうがいいよ。特別展のチケットで常設展にも入れます。高さ約2.5M、幅が約5.0Mあるどでかい作品で、近くで見ると絵の具の盛り上がりや筆の跡が確認できる。油絵のホンモノを見る醍醐味はこの立体感だとおもっていて、それを見てると時間を越えて絵を書いた本人と空間を共有している気がしてくる。そこが面白い。古い書物を見たり故事来歴がある土地や古跡を訪ねるのも同じ。作品の美術的、歴史的価値はよくわからなくても「教科書で読んだことがあるひとが、かつてここにいた(これを描いた、書いた)」という感じが良いね。

おまけ

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