極私的視点(再)

思いついた時に、思いつきの文章とそれっぽい写真を大公開です。

ディズニー・ピクサーの「ズートピア」は素晴らしいぞ

ジュディはなんてカワイイんでしょう

「ベイマックス」もまだ見てないオレなんだが、TVで流れてた予告編にでてきた新米の警官ウサギ「ジュディ」がカワイすぎたし、ライムスター宇多丸氏の映画評でも「500億点」クラスの絶賛だったので観に行きましたよ、ディズニー・ピクサーの「ズートピア」。

結果から言えば、もう最高の100点満点でした。

これほどキャラクターが魅力的で、それらの動きが素晴らしく、ストーリーも波乱万丈でかつミステリー要素が上手く効いてて、過去の名作映画のパクリシーンや大人も子どもも笑えるギャグもありの、大人がニヤリとするくすぐりがあるしでもうサービス満点ですね。今回は吹き替え版を観たんだが、英語がすんなり理解できたうえで英語版を観たならば、もっともっと沢山の仕掛けに気づいたんだろうな。伏線の張り方やその回収もきちんともれなくされてたし、さすがJ・ラセター一家だけのことはある。才能があるヤツラがその力をフルに発揮し、なおかつたゆまぬ努力で寄ってたかって作品をブラッシュアップすりゃぁ、それはスゴイのができるでしょう。当たり前。

ライムスター宇多丸氏も自身のラジオ番組中の映画評論コーナーで「ズートピア」については「”世界最高レベルで超アタマ良くて、しかも最先端の技術を持っててそれを常に磨き上げているヤツラが、更に寄ってたかって死ぬほど努力してやがる”作品がすごくないわけ無い」と言っておりましたが、まさにその通りだと思いますね。

テーマは「いま現在の社会情勢」

この作品は色んな所で指摘されている通り、そのテーマは「差別」ですね。動物の種類ごとで、そして肉食か草食かの違いでそれぞれ相手に偏見を持ったり持たれたり、扱いが違ったりと、その様子はまさに現在のこの世界と同じ。映画の中のエピソードで「肉食だから危険」という偏見で主人公うさぎのジョディは相棒として信頼関係を築いてきたきつねのニックとの関係に決定的な亀裂が入ってしまう。ジョディ自体はそういった偏見を持っていない純粋に正義に燃える警察官という描写が、映画開始当初からずっとされてきているんだが、引っ張りだされた記者会見の席でテンパッてそのような事を喋ってしまう。頭では否定しても、そして普段はそういったことを考えていないと思っていても、その心の奥底にはそういった考えが潜んでいるものだという厳しい指摘がそこにあるのだろう。「差別はいけないよ」とか「差別と戦う正しい主人公が差別され、それに対して戦う」というような単純な話ではないところが、この映画の素晴らしいところだと思うし、そんな脚本を作り上げたスタッフたちは建前でのキレイ事ではなく、彼らとしては主人公ジョディの成長とニックとの関係性から「だれでも差別する心はある。それらを根本的に解決することはできないかもしれないが、それらをいかに乗り越えて異なる者たちそれぞれがお互いに理解し合えるようになるか、それを目指して希望を持って努力することが大切だ」というメッセージを出したかったんじゃないかと、勝手に解釈している。

舞台造形がすばらしい

登場人物(動物?)の動きや背景など、この映画は文句のつけようがないと思う。ジョディが田舎から大都会ズートピアに列車でやってくるシーンでは、山の向こう側から突然ズートピアの高層ビル群が見え、それをみてびっくりしつつもうれしそうな表情を見せるジョディの愛らしさったらありませんわ。その後、列車の進行に伴って、これからドラマの舞台になるズートピアにある様々な環境(氷の世界、砂漠、熱帯雨林など)を見せる手際の良さ。さらにそういった環境がズートピアにあることは、ジョディの警察学校時代のエピソード中、すでに説明済みなので、観客としてはすんなりと理解できる。素晴らしい脚本の妙ですわ。

ズートピアにある様々な環境って、これらか先どこかのディズニーランドで実際に作られるんじゃないかと思いましたね。列車に乗ってズートピアの世界を旅してみたいと思わせる素晴らしい景色です。

ディズニーランドといえば、ジョディが初めてズートピアの中心部分に足を踏み入れるシーン。駅の中から大都会の中心へ進むジョディ目線で描かれるそのイメージは、ディズニーシーの入り口から火山が見える園内へ入る門を抜けた時に感じたイメージに重なって、そのシーンを観ただけでなんだかウキウキしてきましたわ。あの様々な動物がごちゃごちゃと歩いているシーンだけで、ジョディと同じくワクワクどきどきさせるなんて、作った連中は困ったヤツラだわい。

 

 ▲コイツが色んな場面でキーになるぜ

出てくるキャラクター造形もすばらしい

主人公の新米うさぎ警官のジョディと無理矢理その相棒にならされた詐欺師きつねのニックのコンビの関係性には、それぞれの育ってきた背景が絡みつつそれが仲違いを起こす原因にもなったし、それがラストの問題解決に繋がったりと、やはり脚本がとてもうまい。

正義側だと思ってたひとが実は裏では云々とか、悪の総裁的な闇組織の親分は実は娘思いで義理堅い男だったりとか、一筋縄ではいかないキャラクタ設定も抜け目がない。

ピンチに陥った主人公二人が、動物の大きさの違いを利用して窮地を乗り切ったり、「それをそこで使うのか」といったような小道具の使い方が絶妙だったりと、何度も書くけどよく考えられた作品ですねぇ。

それからそれから、この映画では被写界深度のコントロールを表現しているんですね。3DCGなのに実写と同じ。動物たちの毛並み表現もスゴイし、エンドロールを見ると「筋肉表現係」とか「風表現係」とかといった(意味の)スタッフがいたしで、まあスゴイですね。映画上映前に日本版の3DCGアニメの予告編が流れてて、それもかなりのテクニックで「アメリカにも負けてないな」と思ったけど、「ズートピア」の高度さと比べると、やはり一世代遅れているという印象でしたね。まあディズニー・ピクサーがすごすぎるだけですが。

最後に

とりあえず観に行っとけ。絶対ソンはせんわ。

それからあのエンディングのギャグ一発で取る笑いは(劇場でも笑いがおこってたし、オレももちろん笑った)、この映画のテーマである「差別の元になる先入観」によるもので、観客に対する強烈なアピールとともに痛烈な皮肉になってるな、とあとから気づいたわ。よく考えられているわ、スゴイね。