極私的視点(再)

思いついた時に、思いつきの文章とそれっぽい写真を大公開です。

「シン・ゴジラ」(はっきり書いてないけど、中身の大凡が分かってしまう内容ですよ)

公開初日のレイトショーで観ましたよ

▼普段は劇場パンフレットなど購入しないんだが、思わず買ってしまった。850円 「ネタバレ注意」とのオビ付き

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金曜日の昼休み、iPhoneTwitterをチラチラ見たついでに「シン・ゴジラ」というキーワードで検索したら、出てくる内容がほぼホメているもの。初回上映や前日のプレ上映を見た人たちの殆どがほめていて、けなしている内容は目につかない。「進撃の巨人」と大違いだと思い、コレはすかさず見に行かなければと午後の仕事は気もそぞろになって、定時になるとそそくさと帰り支度をはじめ、一旦うちに帰って飯食ってからレイトショーを見に劇場まで車を飛ばしたのでした。

▼ロビーで待ってるオヤジたち。ほとんどがすべて「シン・ゴジラ」待ち

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で、どうだった?

ここから書く内容は細かいネタバレはしない予定なんだが、これまで”TVアニメ”または第一作目の劇場版の「新世紀エヴァンゲリオン」を見たことがある人ならば、映画の内容が容易に想像がついてしまうので、初見で楽しみたい人は見てから読んで下さい。

映画の内容を一言で言えば

この映画は「新世紀エヴァンゲリオン」で、エヴァネルフが出てこない「ヤシマ作戦」です。劇中に実行されるのも「ヤシオリ作戦」と呼称されているし。戦車をずらりと並べて大砲撃ちまくるのに自衛隊の攻撃が全く刃が立たなかったりするのもそのエピソードで見たことある風景。

ゴジラがビームっぽいのをビーと出して、そこら一体をなぎ払うシーンは「ナウシカ」の巨神兵かな、と皆が感じるように、この映画は庵野秀明という人が生み出してきたアニメの映像表現を実写に焼き直したものなので、これまで庵野アニメを見てきた人はどのシーンも「どこかで見たことがあるな」という映像になっております。まあ脇を固める主要なスタッフが「エヴァ」組で、重要なシーンになるとエヴァと同じBGMが(少しづつアレンジを変えながら)流れるし、様々な報告が飛び交う事で作戦が遂行されていることを表現するという手法などもその原因のひとつかもしれんけどね。ちなみに背びれから沢山の光線を一斉に発射する様子は「イデオンのようだ」とプロインタビュアーの吉田豪氏がTwitterで感想を漏らしていたけど、確かにそうとしか思えない描写でした。

それからもう一つ感じたのは、「東京という都市が消失するかもしれない危機の際して、日本人はどうするか?」という少し規模が小さいけど小松左京の「日本沈没」のテーマも含まれているという印象もありましたね。樋口監督にとってはリベンジになるのかな?

この映画のように突如出現した怪獣に対して、日本国がどのように対応するかという様を描いた特撮映画としては「平成ガメラ」シリーズがある。中でも「ガメラ2」はそういったテーマを描いたすべてのもののうちでもベストではないかと思っているんだが、同じテーマの「シン・ゴジラ」がそいつを越えることができるのか?と思いながらも見てた。

同じものをテーマにした「ガメラ」はモンスター同士のバトルを中心にした怪獣映画のフォーマットに則って作られたが、今回の「シン・ゴジラ」はゴジラの出現はあくまで天災のひとつとして扱い、物語の中心は右往左往する人間側を描くという別の切り口から描かれている。表現方法が違うからどちらが優れているかとは言えないが、どちらもファンに間で長く語り継がれるような映画になったことは間違いないと思う。

興行的には無理だろうが、この脚本ならばゴジラが一切映像として出てこない映画としても作れたかもしれないね。今後舞台劇になるかもしれない。

特撮はどうなんだ

特撮は予告編でちらりと見せた映像クオリティーの高さが感じられます。時々粗っぽい印象もうけるCG表現ですが、実写との融和感がとてもよい感じでした。市街地を破壊しながらのし歩くゴジラの表現からガメラっぽさを感じるのは、やはり樋口特技監督が指揮をしているからでしょう。空撮や引きの画を多用して、いかにもTV中継を観ているような本物感というか臨場感を感じさせる画面でした。

特撮について一言で言い表わせば、それは「巨神兵東京に現る」の巨神兵ゴジラに置き換えたものというのが説明としてはいちばん適切だと思う。

全体としてはどうなんだ

前半の展開は突如発生したよくわからん事象に対して、内閣がなるべく穏便に済ませたい、責任は取りたくないという雰囲気満載の「結果ありきの会議」が繰り返される場面がずっと続く。そんな様子をみていて、大企業の末席でもそういった事象を目の当たりにしているオレとしては「大きな組織ってのは、やっぱあんなもんだよな」なんて思いながら見てました。

対策本部の設置準備風景などは、従来の怪獣映画、特撮映画では省かれるものがほとんどなんだが、この映画ではそこから見せる。そこに運び込まれる大量のパソコンやコピー機やコピー用紙、電話機などを見ると、つい先日に地元で豪雨が降った翌日に訪問した区役所の会議室そっくりで、変なところのリアル感に感心してみてました。

大臣や官僚同士の会話なども実際に近くにいる人達にとってはとてもリアルだったのかもしれない。特撮映画の会議といえば、防衛軍のえらい人と何でも知ってる天才科学者が対策を協議する場というのが定番だが、この映画では省庁それぞれの利害関係が見え隠れするやり取りや、会議後の仲間内での愚痴など、ドラマとして面白かったから、あれだけ会議でいろいろと話をする長いセリフだけの場面でも、飽きず見ることが出来ましたね。かなり調べて脚本を作ったんだろうなと感心しながら観てた。

東京湾に出現した不明生物は呑川に沿って内陸部へ遡ったり、鎌倉に再上陸した後にはおそらく横須賀線にそうように武蔵小杉や品川周辺などを破壊して歩いたりと、かつて首都圏に住んでた時の生活圏内(住居だったり仕事場だったり、通勤路だったり)がたくさん出てきたのは個人的に「あそこら辺をゴジラが歩いておるわけか」などという感想と、それらの町並みの表現のリアルさも加わってより一層の身近な本当の出来事のように感じましたわ。

この映画は第一作目のゴジラを意識して作られたとは様々な人が公開前から指摘されていたんだが、昭和ゴジラではすっかり忘れ去られ、平成ゴジラでも一作以降はあまり重要視されていない放射能の影響についてはっきりと言及される。第一作目のゴジラはおそらく戦中の空襲の記憶がベースになっていると思っているんだが、この作品ではやはり東日本大震災福島原発事故が物語のベースにあると感じた。ゴジラ呑川を遡上する際の水の逆流や、それに伴う無断係留されたボートが押し流される様子などは、東日本大震災津波に流される自動車と重なった。それに加えて会議で連発される「想定外の自体だ」や、総理大臣や官房長官の記者会見の場面など、5年前に余震を感じながらTVで実際に目にしたシーンと変わらない。この映画を見たあとだと余計に、あの記者会見の裏で映画で描かれたようなやり取りが実際にあったんだろうな、と思ってしまったりする。この映画は東日本大震災という大きな災いを首都圏の人々が直接経験したことから初めて作ることが可能となった映画なんだろう。やはり阪神大震災の体験と記憶とはその点が決定的な違いなんだろうな。

で、結局

ラストは「もしかして続編もありかな?」というニュアンスで終わるんだが、その解決方法はアメリカを中心とした国連軍が主張する核兵器使用ではなく、世界中の知識を総結集して編み出した技であったというのは、庵野監督が「まだまだ人間同士が知恵を出し合えば、世界は良くなるに違いない」というメッセージだったのではないか、と思いましたね。

いろんなことを書いたけど、新しいゴジラの製作は総監督庵野秀明、監督樋口真嗣だと聞いた時の絶望感は全く杞憂であって、誰でも楽しめるとはいえないまでも、特撮好きで庵野秀明作品が楽しめる人ならばおすすめです。前半の会議しっぱなしのシーンをただただ見せつけられても面白かったです。

で、最後に

この映画は登場人物が300人を越えるというので話題にもなってて、確かに沢山の人たちが出てくる。主要登場人物の三人もそれぞれ個性があってヨイと思いましたが、願わくば石原さとみが演じた役は、もっと背が高いモデル系で本当にネイティブな英語が喋れる人が良かったかな。彼女は彼女で魅力的なことには間違いはないんですんが、その点が少し残念。

登場人物らで一番感情移入出来たのは、各省庁のはみ出し者を集めた研究班の有能で個性あふれる面々でした。個人的に付き合うのは遠慮したいけど、みながみな頼もしくて好きです。そのメンバーのひとりで普段はノーメークで無表情な市川実日子が、最後でホッとしたような表情で笑うのがとても可愛くてステキでした。

官房長官役の柄本明のいかにも一癖ありそうな佇まい、非常時において周りのプレッシャーで内心慌てているんがまるわかりの総理大臣役の大杉漣など、いかにもいそうな(あの時にいたような(笑))政治家たちもなかなかよい感じでした。予告編を見た時からそんな雰囲気は感じていたけど、それは特撮映画というよりも人間ドラマという味がつよく感じられる映画になっていてとても良かったと思います。

そんな登場人物群なのですが、一番印象に残ったというか美味しいところをさらったのが平泉成ですね。ダメダメっぽい登場の仕方なんだが、実は有能だった、でもそんなことはおくびにも出さないという役どころはとてもかっこよかったね。

面白かったです。評価は10点満点中7.5点くらいです。

それにしても、ラストでアップになるゴジラのシッポにあった人型っぽいものは何だったんだろうか?進化の頂点に達したゴジラから新たな人類が生まれるという示唆なのか?絶対続編が作られるな、これは。